川上弘美の代表作は、
「センセイの鞄」
「蛇を踏む」
「いとしい」
等々、です。
川上弘美の小説で好きなところは、
いつも主人公がぽかんとしていることです。
焦ったり、憤ったり、悲しんだり、怒ったり、
それもあるのですが、基本はぽかんとしている。
そのことになんだかほっとして救われます。
ゆるーい雰囲気の作品が多いのですが、
それだけではない、何かが、
川上弘美の作品にはあります。
キザなことばや訓戒のようなことは、
文章中に絶対出てこないけれど、
読み手は何かを感じることができる。
そしてそれは、
読者ごとに違うことであるような気がします。
それが川上弘美のすごいところだと思うのです。
川上弘美の作品の中で、
「ニシノユキヒコの恋と冒険」
という小説が好きです。
ニシノユキヒコという一人の男性は恋多き男で、
何人もの女性と親しくなります。
これだけ書くとただの女たらしの話みたいで、
まあ実際もそうなのですが、
やっぱりただそれだけでないのです。
妙な説得力があります。
彼と関係したそれぞれの女性が、
ニシノユキヒコとの思い出を語っていくのですが、
それを読んでいると、恋愛なんて、
たいしたことないものなんだ、
といい意味で思うことができます。
すごく辛くて苦しい恋をしている人に、
ぜひ読んでもらいたい作品です。
そんな恋も笑いとばせるくらいの気持ちに
なれるんじゃないかと思います。
川上弘美の作品は淡々としているけど、
内から湧いてくる謎のパワーのようなものがあります。
人生をもっと楽しんでみようかな、
と肩の力を抜くことができるのです。
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